Yahoo!ショッピングの魅力に隠された2つの法則
2013年12月28日
前回の記事「2013年 終了したWebサービスで振り返る」。
カードを切るように目まぐるしく変わるWebサービス市場の螺旋からはずれ、
終幕を迎えるサービスがあれば、もちろん新たな歩みを進めるサービスもあるわけです。
Yahoo!ショッピング無料化とLINEモール
2013年に飛び込んだ大きなWebサービス関連のニュースはやはり、
Yahoo!ショッピングの無料化ではないでしょうか。
Yahoo!ショッピングは出店料を徴収するのではなく、広告収入で利益を出していく
ビジネスモデルに変わっていきます。トラフィックを稼いで、広告収益を上げていくのは
ヤフーが得意とするところですね。
費用面の問題からネットショップと疎遠になっていた方も多いと思うので、
これを契機に、ネットショップを開業する人も増えていくと思われます。
しかし、無料化にすることで、ビジネスモラルの欠けた出店者も
出てくることもあるでしょう。出店料を出していても、楽天優勝セールで
問題になったように、悪い方はいらっしゃいますが…
Yahoo!ショッピングや楽天市場などをオンラインショッピングモールと
呼んだりしますが、Yahoo!ショッピングの無料化以外にも、LINEがLINEモールという
オンラインショッピングモールサービスを運営するというニュースもありました。
Yahoo!ショッピングや楽天市場とは一線を画していて、LINEモールは
スマホ利用者をターゲットにしているようです。一昔前、DeNAが「bidders(現:DeNAショッピング)」
というサービスで携帯電話でのeコマース展開に取り組んでいましたが、
ターゲットとしては近いものがあります。
なぜオンラインショッピングモールサービスなのか?
激化するモール市場(そう、amazonもモールサービス)。ヤフーにしても、
LINEにしても、なぜオンラインショッピングモールサービスをはじめるのか。
そこにはマネタイズする何かがあるはずです。
事業者がネットショップを開業したいと思った際、
その方法は大別して3つに分けられます。
- ① モールサービスを利用して、ネットショップをつくる。
- ② ASPサービスを利用して、ネットショップをつくる。
- ③ EC-CUBEなどのオープンソースを利用するなど、一から制作する。
それぞれメリットとデメリットがあります。その説明は次回に譲るとして…、
今回は、①と②について、解説していきます。
モールサービスとASPサービスの違いとは?
モールサービス | 楽天やYahoo!ショッピングが代表的。簡単に言うと、「楽天市場」というデパートの中にお店をつくるということ。 |
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ASPサービス | MakeShopやカラーミーショップが代表的。簡単に言うと、テナント(居抜き物件)を借りて、お店を開くということ。 |
ASPサービスは、アプリケーション・サービス・プロバイダのことで、
インターネットのアプリケーションをレンタルするサービスです。
ネットショップでは、オンライン上で買い物できるカートシステムをレンタルする
ということになります。それがネットショップのASPサービス。
モールサービスが街の中心部にあるショッピングセンターに出店する感じ(イオンなど)で、
ASPサービスは郊外にあるテナントを借りるって感じ(商店街など)です。これで、モールサービスと
ASPサービスの違いが何となくわかっていただけたかと思います。
では、なぜヤフーやLINEはASPサービスのビジネスモデルではなく、
モールサービスのビジネスモデルに進んだのか、そこを探ってみましょう。
無料通話アプリ「LINE」が普及していく理由~メトカーフの法則~
無料通話アプリ「LINE」を例にあげますが、LINEに限らず、Yahoo!ショッピングも
楽天市場もfacebookもTwitterもアメブロも、なぜこんなに普及しているのか。これらの
Webサービスはある法則により、普及していくのです。
その法則こそ、メトカーフの法則です。
wikipediaでその概要を理解しましょう。
メトカーフの法則(メトカーフのほうそく、Metcalfe's law)は、通信網に関する法則。
日本では、一般に「メトカルフェの法則」として定着している。
「通信網の価値は利用者数の二乗に比例する。また、通信網の
価格は利用者数に比例する。」
例えば通信網に対し現在の3倍の費用をかけると(利用者を3倍にすると)、
その通信網の価値は9倍になるという考え方。
たとえば…
LINEを例にあげますね。LINEというのはとてもいいサービスですが、
あなただけが利用しているとしたら、まったく意味をなさないアプリですよね?
あなたの他に利用する人がたくさんいるから、便利なんですよね?
たとえば…
LINEのアプリをたった10人しかダウンロードしなかった場合、
通話の組み合わせはどうなるでしょうか?
【10人がLINEを利用した場合の組み合わせ】
10C2=(10×9)÷(2×1)=45
つまり、45通りの組み合わせがあります。
続いて、一気に100人が利用した場合の組み合わせをみてみましょう。
【100人がLINEを利用した場合の組み合わせ】
100C2=(100×99)÷(2×1)=4,950
よって、4,950通りの組み合わせになるわけですね。
LINEのダウンロード数(利用者数)を10倍にしたら、その通話の組み合わせは
2乗の100倍、4,950通りになりました。これがメトカーフの法則です。
簡単に言えば、利用者が増えなければ、全く意味はないですが、利用者が
増えれば増えるほど、その価値は飛躍的に上がるということです。
モールサービスの強みはここにあるわけです。
価値があるから、利用する。利用するから、またさらに価値が
上がるというサイクルをつくることができる。これは単独のネットショップや
サイトではできないことです。モールサービス独自の特徴です。
なぜショッピングモールで買い物をするのか?~ライリーの小売り引力の法則~
まだモールサービスを選んだ理由があります。イメージしてください…
あなたは夢を追いかけるミュージシャンです。新しいギターが欲しくなりました。
ここで、質問です。同じくらい離れた距離に2つの楽器屋さんA、Bがあります。
Aの楽器屋さんには、ギターが5本しかありません。
Bの楽器屋さんには、ギターが500本もあります。
どちらの楽器屋さんに行きますか?
同じくらい離れているから、両方とも行くでしょ、
と答えた方はイジワルですね。
おそらく、多くの方がBの楽器屋さんに行くと思います。
価格帯や種類が豊富ですからね。これにも実は法則があるのです。
その法則こそ、ライリーの小売り引力の法則です。
またまた、wikipediaでその概要を理解していきましょう。
(顧客吸引力は、人口ないし品揃えに比例し、距離の二乗に
反比例する:これを一般化すると、「集積によって発生する効果は、集積量に比例し、
アクセスの容易さの二乗に比例する」となる)を情報集積に応用し、「情報通信では
アクセスは無視できるから、情報集積の全体効果が集積量の数乗倍で利いてくる」
つまり、たくさんモノが集まっているところに、お客様は引力で引き寄せられるように
行ってしまうということです。だから、1店舗だけあるお店よりもイオンモールみたいな
ショッピングセンターに行くわけなのです。
引用文にもあるように、ネットでは距離は関係ないから、
商品数によって効果が変わるわけです。
モールサービスだと、出店するお店が多いほど、販売する商品数が多いほど、
お客様が集まるということ。
だから、単独のサイトに比べ、モールサービスの方がお客様を
呼び込む力があるというわけなのです。
これもモールサービスならではの強みです。ヤフーもLINEも
モールサービスを採用する理由の一つになっているはずです。
しかしながら、この2つの法則があるからと言って、
必ずしも成功するわけではありません。
マーケティング力も必要になりますし、インセンティブの施策も
重要になってきます。ヤフーとLINE、どうなるのでしょうか…
今後、この2つのWebサービスの動向から目がはせません。